北方民族博物館 見学 オホーツク文化 クマ送りの儀式とアイヌの楽器ムックリ(口琴)に親しむ 網走


北海道立 北方民族博物館公式サイト(網走)を見学。館内で流していたクマ送りの儀式の映像にとても惹かれた。あと本場オホーツクの人々の口琴の映像も良かった。
〒093-0042 北海道網走市潮見309−1

クマ送り

熊送り儀礼に使われる打楽器 北方民族博物館の館内映像(撮影自由)
ウリチ/アムール川下流域 Ul’chi/Lower Amur

 

 

熊送り
熊を獣のなかで特別な存在とみなし、これを殺害するときに執行される儀礼の総称。この儀礼は、北方ユーラシア大陸を中心に、北アメリカ、ベトナム山地、バスク地方など、熊の生息する地域のほとんどの民族にみられ、俗に熊祭といわれることもあり、アイヌではイオマンテという。つまり、熊のすむ地帯では、他の獣を超えた力をもっていることから、熊は獣の王、野獣世界の支配者とみなされる。また、人間が森の中で遭遇するもっとも危険な存在であることなどから、森の主にも位置づけられる。この森と人間の村とが一つの宇宙を形成しており、儀礼の対象となる熊は、森の野獣世界から人間社会を訪問し、そこで手厚い歓待を受け、丁重な儀礼をもって殺害される。これによって初めて毛皮や肉などの仮装を脱ぐことができ、そして神のいる森へふたたび帰るために不可欠な霊的存在になることができるとされる。
熊送り(熊祭)|日本大百科全書・世界大百科事典|ジャパンナレッジ

 

この映像を見た時、何とも言えない恐怖と畏怖と神聖さを感じた。私は無宗教なのに何か軽々しく立ち入ってはいけない領域のような気がした。以前は「生贄」というと残酷な風習のように感じていたが、熊送りの映像を見た時「生贄は必ずしも残酷とは言えないのでないか」と感じた。もちろん犠牲になる熊にとっては残酷な行為だけれども。恐らく昔の人は熊を殺す時に命の重みを感じて儀式に臨んだのでないか。現代では考えられないような不条理な習慣もあっただろう。とてつもなく恐ろしいのだが、何か強烈に惹きつけられる魅力も感じた。

熊送りには熊を狩った時に行う儀式と、飼いならした子熊が大きくなって殺す時に行う儀式があるという。後者は特に残酷さが際立っている。写真を見るとまだ子供の熊も対象になっている。現代なら動物愛護団体の抗議の対象になりそうだが、私達だってまだ子供の生き物を食べ物として取り入れていることはあるし、残酷さには変わりないのだ。むしろ残酷さから目を背けない所に学ぶべき所もあるかもしれないと感じた。

仔グマ飼育型クマ送りはいつから
広く北部ユーラシアから北アメリカに至る北方地域における北方諸族の問では、山猟でクマをしとめた場合にその場で解体し、頭骨をはじめとする骨をその場で天の世界に送り返す儀礼を行っている。これは「オプニレ型」と呼ばれる動物儀礼である。これに対して「オマンテ型」とされる儀礼は「仔グマ飼育型クマ送り」を指し、きわめて特殊なもので厳格な規律の中で行われる最高のスタイルの儀礼とされる。
母グマは冬ごもり中に仔グマを出産する。アイヌの人たちは、春先にその母グマを殺し、山でその送りを行い、仔グマを集落に連れ帰るのである。北海道の場合はその仔グマが二歳になった冬に—樺太(サハリン)の場合は三歳まで育てることがあるというが—、それを殺して送りを行うのである。それが「仔グマ飼育型クマ送り」であり、一般的にいうイオマンテ(イヨマンテ)である。
オホーツク「クマ祀り」の世界 – OKHOTSK

 

イオマンテの⽅法は、⼭でクマを獲った場合と飼育した場合があります。⼭でクマを送るときは、⽳にこもっている成獣が対象となります。このとき、⼦グマがいる場合があります。その場合、⼦グマを決して殺すことはなく、村(コタン)に連れて帰り、1〜2年もの間、⼤事に飼育します。1〜2年後の2〜3⽉ころに、先に送った親グマが住む神の国(カムイモシリ)へ送るのです。

Image from Gyazo

2021年度札幌⼤学学芸員課程 企画展 『共創 〜カムイとアイヌと動物と〜』 オンライン展覧会 儀礼編① クマ送りの起源 ―オホーツク⽂化の⾻塚よりー

 

白老周辺では、悪心を起こして人を襲ったのか、自衛上やむを得ず襲ったのか、出来心であったのかを判断し、その度合いによって処置し、音更(おとふけ)のアイヌは、爪や牙が欠けているのはクマが何か悪事を起こした証であり、例えば歯牙の欠けなどの異常が2個あった場合には、このクマは神に対して2度罪科を犯したものと判断したそうです。

獲ったクマの身体についても、徹底的に調べられ、牙や爪が欠けているような異常があれば人を襲った証拠としました。

凶暴なクマの亡骸(なきがら)は野ざらしにされ、埋葬することもなく腐敗するに任せて放置されたり、肉を切り刻んで周囲にぶちまけ、鳥や犬が食べるのに任せたり、皮を裏返しに剥いで葬るなど、どの地域のアイヌにおいても、そこに神を崇めるという姿は見られません。

動物や植物だけでなく、お椀などの道具が壊れたときでさえ簡易な送りをするアイヌにとって、山の最高位の神であるクマの霊を送らないということは、異例中の異例だと言えます。

シリーズ:クマの保護管理を考える(14)アイヌの人々の見たヒグマ |WWFジャパン

 

「キタキツネの霊送り」なんてものもあるんだな。しかも「1986年に道東の美幌峠で行われた」なんて、結構最近じゃないか。オホーツク文化は5〜13世紀にサハリン南部、北海道オホーツク海沿岸、千島列島にかけて展開した⽂化で、ヒグマのイオマンテ(霊送り)もその頃から行われていたらしいが、それを1986年に一時的に復刻させたのか。「当時のアイヌの人達もほとんど知らない幻の祭り」という断り書き付きというのは、イオマンテ自体はだいぶ前に廃れてたのかな。

アイヌの「幻の祭り」チロンヌプカムイ イオマンテ(キタキツネの霊送り)が映画としてよみがえる
1986年に北海道・美幌峠で撮影

口琴(ムックリ)

シベリアの木製口琴と金属製口琴  北方民族博物館の館内映像(撮影可)
ケット/西シベリア Ket/ Western Siberia 木製口琴 Wooden jew’s harp
サハ/東シベリア Sakha/Eastern Siberia  金属製口琴 Metal jew’s harp

↓訪問時はわからなかったが、2番目の動画の右側にいる男性は口琴奏者スピリドン・シシーゲン(Spiridon Shishigin)さんだとわかった。その世界では有名な人だった。YouTubeにもいくつか動画があり、CDやDVDなども出ているが、ビデオ類は入手困難なものが多い。

参考:Spiridon Shishigin _ ディスコグラフィー _ Discogs

ロシア/サハ共和国 金属製口琴 中国/内モンゴル自治区/ハイラル区 エベンキ 金属製口琴 ロシア/ハバロフスク地方 ナーナイ 金属製口琴
北海道/常呂 サハリンアイヌ 竹製口琴 北海道/網走 北海道アイヌ 竹製口琴

口琴はムックリともいうと後に知った。北方民族博物館の売店でムックリが1000円で売られていたが、その時はムックリが口琴だとわからず、子供用のおもちゃか何かだと思って気になったものの買わなかった。その後、Amazonや楽天などでも口琴が安く売られていると知ったが、せっかくなら北海道の現地で買いたかった。

結局、その後ネットで探してアイヌの竹製のムックリを購入してみたが、音をだすのがなかなか難しい。腕がすごく疲れてくるのだが、力の入れ方のコツとかあるのか?あと口でくわえた時に弁があたってかなり痛い。→狂ったようにブンブン引っ張っていたら一瞬倍音っぽい音が鳴り、音色の変化も付けられたが、再現できる自信はない。

これも独特で面白い。

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